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令和6年5月28日 公正取引委員会 はじめに  公正取引委員会は、迅速かつ実効性のある事件審査を行うとの基本方針の下、国民生活に影響の大きい価格カルテル・入札談合・受注調整、中小事業者等に不当に不利益をもたらす優越的地位の濫用や不当廉売などに厳正かつ積極的に対処することとしている。  令和5年度においては、規制改革が進められてきた電力・ガス事業分野における大口需要家向け都市ガス供給を巡る受注調整及び家庭用都市ガス・電気料金を巡る価格カルテル、官報の印刷に使用される用紙の発注を巡る入札談合等に厳正に対処したほか、これまで法的措置を採ったことがなかった漁業協同組合が関係する水産物の取引、興行事業者と映画配給事業者との映画作品の上映に係る取引、結婚相談所連盟と結婚相談所の取引における競争上の問題について確約手続を利用し、効率的かつ効果的に対処した。  また、令和5年10月のインボイス制度の実施や昨今の労務費・原材料費・エネルギーコストの急激な上昇に伴う中小事業者等の取引価格へのコスト上昇分の転嫁に関連した優越的地位の濫用につながるおそれがある事案など中小事業者等に不当に不利益を与える行為に迅速に対処した。 さらに、Google LLCらによる独占禁止法違反被疑行為に関して、個別事件の審査の初期段階において初めて、審査の開始を公表し、第三者からの情報・意見の募集を行った。 令和5年度における独占禁止法違反事件の処理状況は、次のとおりである。 第1 審査事件の概況 1 法的措置等の状況 (1) 排除措置命令等の状況  令和5年度においては、独占禁止法違反行為について、延べ18名の事業者に対して、4件の排除措置命令を行った。排除措置命令4件の内訳は、価格カルテル1件、入札談合2件、受注調整1件となっている。これら4件の市場規模は、総額29億円超である。  また、令和5年度においては、独占禁止法違反被疑行為について、5名の事業者に対して、5件の確約計画の認定を行った(注1)。いずれも不公正な取引方法(優越的地位の濫用2件、その他の拘束・排他条件付取引(注2)3件)となっている。 (注1) 確約計画の認定は、確約手続に係る通知を受けた事業者から申請された確約計画を公正取引委員会が認定するという、独占禁止法に基づく行政処分である。公正取引委員会は、認定した確約計画に従って確約計画が実施されていないなどの場合には、当該認定を取り消し、確約手続に係る通知を行う前の調査を再開することとなる。 (注2) その他の拘束・排他条件付取引とは、再販売価格の拘束以外の拘束・排他条件付取引を指す(以下同じ。)。 図1 法的措置(注3)件数等の推移 (注3) 法的措置とは、排除措置命令、課徴金納付命令及び確約計画の認定のことである。一つの事件について、排除措置命令と課徴金納付命令が共に行われている場合には、法的措置件数を1件としている。 (注4) 私的独占と不公正な取引方法のいずれも関係法条となっている事件は、私的独占に分類している。 (注5) その他のカルテルとは、数量、販路、顧客移動禁止、設備制限等のカルテルである。 (2) 警告等の状況  令和5年度においては、警告に加え、各事案の内容を踏まえて、注意等の事案についても、事案の概要を公表することにより、独占禁止法や競争政策上の問題点を広く周知するなどの処理を行った。   ア 違反の疑いのある行為が認められた3件について、関係事業者に対し、事前説明を行った上で警告・公表を行った(価格カルテル:1件、受注調整:1件、不当廉売:1件)。  イ 違反につながるおそれのある行為がみられたものであって、競争政策上公表することが望ましいと考えられる事案であり、かつ、関係事業者から公表する旨の了解を得た2件について、注意・公表を行った(優越的地位の濫用:1件、競争者に対する取引妨害:1件)。  ウ 事業者から自発的な改善措置の報告を受けた1件について、法運用の透明性や事業者の予見可能性を高める観点から、事案の概要を公表した(優越的地位の濫用:1件)。 図2 排除措置命令・確約計画の認定・警告等の件数の推移       (注6) 事案の概要を公表したものに限る。 (3) 課徴金納付命令の状況  令和5年度においては、延べ16名の事業者に対して、総額2億2340万円の課徴金納付命令を行った。    一事業者当たりの課徴金額の平均は1396万円(注7)であった。 (注7) 一事業者当たりの課徴金額の平均については、1万円未満切捨て。 表1 課徴金額等の推移       (注8) 課徴金額については、千万円未満切捨て。 2 申告の状況  令和5年度において、独占禁止法の規定に違反すると考えられる事実について、公正取引委員会に寄せられた報告(申告)の件数は、3,228件であった。  申告が書面で具体的な事実を摘示して行われるなど一定の要件を満たした場合には、申告者に対して措置結果等を通知することとされているところ、令和5年度においては、3,005件の通知を行った。 図3 申告件数の推移 3 課徴金減免制度の状況  公正取引委員会は、事業者が自ら関与したカルテル・入札談合について、その違反内容を当委員会に自主的に報告した場合、課徴金が減免される制度(以下「課徴金減免制度」という。)及び課徴金減免申請の申請順位に応じた減免率に、課徴金減免申請を行った事業者(調査開始日より前に最初に課徴金減免申請をした者を除く。)の事件の真相の解明に資する程度に応じた減算率を付加する制度(以下「調査協力減算制度」という。)を運用している。  令和5年度において、課徴金減免制度に基づき、事業者から自らの違反行為に係る事実の報告等が行われた件数は、156件であった(平成18年1月の制度導入時から令和5年度末までの累計は1,573件)。  また、令和5年度においては、価格カルテル・受注調整・入札談合事件4件における延べ13名の課徴金減免制度の適用事業者について、これらの事業者の名称、減免の状況等を公表した(注9)。このうち、4事件計9名の事業者に調査協力減算制度を適用した。 (注9) 公正取引委員会は、法運用の透明性等を確保する観点から、課徴金減免制度が適用された事業者について、課徴金納付命令を行った際に、当委員会のウェブサイトに、当該事業者の名称、所在地、代表者名及び免除の事実又は減額の率等を公表することとしている(ただし、平成28年5月31日以前に課徴金減免申請を行った事業者については、当該事業者から公表の申出があった場合に、公表している。)。  なお、公表された事業者数には、課徴金減免申請を行った者であるものの、①独占禁止法第7条の2第1項に規定する売上額(課徴金の算定の基礎となる売上額)が存在しなかったため課徴金納付命令の対象になっていない者及び②算出された課徴金額が100万円未満であったため独占禁止法第7条の2第1項ただし書により課徴金納付命令の対象になっていない者のうち、公表することを申し出た事業者の数を含めている。  ウェブサイト https://www.jftc.go.jphttps://www.jftc.go.jp/dk/seido/genmen/kouhyou/index.html 表2 課徴金減免申請件数の推移 (単位:件) 年度 R元 R2 R3 R4 R5 累計 (注10)

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令和6年5月28日 公正取引委員会 はじめに  公正取引委員会は、迅速かつ実効性のある事件審査を行うとの基本方針の下、国民生活に影響の大きい価格カルテル・入札談合・受注調整、中小事業者等に不当に不利益をもたらす優越的地位の濫用や不当廉売などに厳正かつ積極的に対処することとしている。  令和5年度においては、規制改革が進められてきた電力・ガス事業分野における大口需要家向け都市ガス供給を巡る受注調整及び家庭用都市ガス・電気料金を巡る価格カルテル、官報の印刷に使用される用紙の発注を巡る入札談合等に厳正に対処したほか、これまで法的措置を採ったことがなかった漁業協同組合が関係する水産物の取引、興行事業者と映画配給事業者との映画作品の上映に係る取引、結婚相談所連盟と結婚相談所の取引における競争上の問題について確約手続を利用し、効率的かつ効果的に対処した。  また、令和5年10月のインボイス制度の実施や昨今の労務費・原材料費・エネルギーコストの急激な上昇に伴う中小事業者等の取引価格へのコスト上昇分の転嫁に関連した優越的地位の濫用につながるおそれがある事案など中小事業者等に不当に不利益を与える行為に迅速に対処した。 さらに、Google LLCらによる独占禁止法違反被疑行為に関して、個別事件の審査の初期段階において初めて、審査の開始を公表し、第三者からの情報・意見の募集を行った。 令和5年度における独占禁止法違反事件の処理状況は、次のとおりである。 第1 審査事件の概況 1 法的措置等の状況 (1) 排除措置命令等の状況  令和5年度においては、独占禁止法違反行為について、延べ18名の事業者に対して、4件の排除措置命令を行った。排除措置命令4件の内訳は、価格カルテル1件、入札談合2件、受注調整1件となっている。これら4件の市場規模は、総額29億円超である。  また、令和5年度においては、独占禁止法違反被疑行為について、5名の事業者に対して、5件の確約計画の認定を行った(注1)。いずれも不公正な取引方法(優越的地位の濫用2件、その他の拘束・排他条件付取引(注2)3件)となっている。 (注1) 確約計画の認定は、確約手続に係る通知を受けた事業者から申請された確約計画を公正取引委員会が認定するという、独占禁止法に基づく行政処分である。公正取引委員会は、認定した確約計画に従って確約計画が実施されていないなどの場合には、当該認定を取り消し、確約手続に係る通知を行う前の調査を再開することとなる。 (注2) その他の拘束・排他条件付取引とは、再販売価格の拘束以外の拘束・排他条件付取引を指す(以下同じ。)。 図1 法的措置(注3)件数等の推移 (注3) 法的措置とは、排除措置命令、課徴金納付命令及び確約計画の認定のことである。一つの事件について、排除措置命令と課徴金納付命令が共に行われている場合には、法的措置件数を1件としている。 (注4) 私的独占と不公正な取引方法のいずれも関係法条となっている事件は、私的独占に分類している。 (注5) その他のカルテルとは、数量、販路、顧客移動禁止、設備制限等のカルテルである。 (2) 警告等の状況  令和5年度においては、警告に加え、各事案の内容を踏まえて、注意等の事案についても、事案の概要を公表することにより、独占禁止法や競争政策上の問題点を広く周知するなどの処理を行った。   ア 違反の疑いのある行為が認められた3件について、関係事業者に対し、事前説明を行った上で警告・公表を行った(価格カルテル:1件、受注調整:1件、不当廉売:1件)。  イ 違反につながるおそれのある行為がみられたものであって、競争政策上公表することが望ましいと考えられる事案であり、かつ、関係事業者から公表する旨の了解を得た2件について、注意・公表を行った(優越的地位の濫用:1件、競争者に対する取引妨害:1件)。  ウ 事業者から自発的な改善措置の報告を受けた1件について、法運用の透明性や事業者の予見可能性を高める観点から、事案の概要を公表した(優越的地位の濫用:1件)。 図2 排除措置命令・確約計画の認定・警告等の件数の推移       (注6) 事案の概要を公表したものに限る。 (3) 課徴金納付命令の状況  令和5年度においては、延べ16名の事業者に対して、総額2億2340万円の課徴金納付命令を行った。    一事業者当たりの課徴金額の平均は1396万円(注7)であった。 (注7) 一事業者当たりの課徴金額の平均については、1万円未満切捨て。 表1 課徴金額等の推移       (注8) 課徴金額については、千万円未満切捨て。 2 申告の状況  令和5年度において、独占禁止法の規定に違反すると考えられる事実について、公正取引委員会に寄せられた報告(申告)の件数は、3,228件であった。  申告が書面で具体的な事実を摘示して行われるなど一定の要件を満たした場合には、申告者に対して措置結果等を通知することとされているところ、令和5年度においては、3,005件の通知を行った。 図3 申告件数の推移 3 課徴金減免制度の状況  公正取引委員会は、事業者が自ら関与したカルテル・入札談合について、その違反内容を当委員会に自主的に報告した場合、課徴金が減免される制度(以下「課徴金減免制度」という。)及び課徴金減免申請の申請順位に応じた減免率に、課徴金減免申請を行った事業者(調査開始日より前に最初に課徴金減免申請をした者を除く。)の事件の真相の解明に資する程度に応じた減算率を付加する制度(以下「調査協力減算制度」という。)を運用している。  令和5年度において、課徴金減免制度に基づき、事業者から自らの違反行為に係る事実の報告等が行われた件数は、156件であった(平成18年1月の制度導入時から令和5年度末までの累計は1,573件)。  また、令和5年度においては、価格カルテル・受注調整・入札談合事件4件における延べ13名の課徴金減免制度の適用事業者について、これらの事業者の名称、減免の状況等を公表した(注9)。このうち、4事件計9名の事業者に調査協力減算制度を適用した。 (注9) 公正取引委員会は、法運用の透明性等を確保する観点から、課徴金減免制度が適用された事業者について、課徴金納付命令を行った際に、当委員会のウェブサイトに、当該事業者の名称、所在地、代表者名及び免除の事実又は減額の率等を公表することとしている(ただし、平成28年5月31日以前に課徴金減免申請を行った事業者については、当該事業者から公表の申出があった場合に、公表している。)。  なお、公表された事業者数には、課徴金減免申請を行った者であるものの、①独占禁止法第7条の2第1項に規定する売上額(課徴金の算定の基礎となる売上額)が存在しなかったため課徴金納付命令の対象になっていない者及び②算出された課徴金額が100万円未満であったため独占禁止法第7条の2第1項ただし書により課徴金納付命令の対象になっていない者のうち、公表することを申し出た事業者の数を含めている。  ウェブサイト https://www.jftc.go.jphttps://www.jftc.go.jp/dk/seido/genmen/kouhyou/index.html 表2 課徴金減免申請件数の推移 (単位:件) 年度 R元 R2 R3 R4 R5 累計 (注10)

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